手帳の鉛筆

第3話 『地面の湖』

 風呂上がりに二階の自分の部屋に上がり、窓を開けてベランダに出た。乾いた普通サイズのタオルでもう一度髪をかき回し、それを肩にかけて「ふう」と息をついた時、目の前が一面湖になっている事に気付いた。僕は正直「うわぁ」と声をあげそうな程に驚いたのを覚えている。
夕方の少し紫色がかった空と所々に浮かぶ薄い雲が、地面であるはずの場所にも上下逆さまに映って、ずっと向こうまで広がっているのだ。
上にも下にも夕方の空。その不思議な景色の仕組みはすぐに理解できた。水田だ。つい数日前までレンゲの花が咲いていた田んぼが、あっと言う間に耕され、用水路から導かれた水で満たされたのだ。
そう言えば昨日も部活の帰りに、トラクターに乗った麦わら帽子のおじさんが僕を追い越して行ったっけ。

 田んぼが広がるこの地区に立つ家は、まだそれほど多くない。僕の窓から見える何十枚もの広い田んぼがほんの数日で、いや、もしかしたら今日一日でトラクターでかき回されて、きめ細かいチョコレートのようになったのかもしれない。
そうして風の止んだ夕方、今、暮れかけの空をその水面に写している。

 いつのまにか星もいくつか輝き出している。僕は湯冷めするのも気にせず、しばらく田んぼの湖に星が増えていくのを見ていた。
友達のたくさんいた市営団地から、少し郊外のこの新築の一軒家に引っ越してきて一年目の五月のことだ。

昭和52年から始まった私どもの会社は、たくさんのお客さま、業者さま、 そして従業員に支えられながら現在も家造りの仕事に携わる事ができています。 創業より変わらず掲げ続ける目標『たしかな住みごこち』を、ひとりひとりのお客さまに感じていただけるよう、これからも日々、精進して参りたいと思います。

 

巣山建築設計事務所
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